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西村陽一郎写真集「青い花」

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カメラを使わない撮影技法スキャングラムの発見により写し出された、身近な花々が青白く光る影の世界。西村陽一郎の自身2冊目の写真集です。

第58回 全国カタログ展 図録部門 「金賞」「国立印刷局理事長賞」ダブル受賞作品


500部限定発行 / 作家署名入り
B4 サイズ(縦372mm × 横265mm × 高さ20mm)
ハードカバー / 112 ページ
​出版 株式会社鎌倉現代 
ISBN: 978-4-9909070-0-6

解説 森山大道
   飯沢耕太郎

編集 田森葉一
詩  新美亜希子
翻訳 河田展子
印刷 株式会社山田写真製版所
​   熊倉桂三(プリンティングディレクター)

送料:無料(※購入最終ページで無料と表示されます)
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■ 作家プロフィール

西村陽一郎
1967年東京都生まれ。美学校写真工房修了。撮影助手を経て1990 年に独立し、フリーランスの写真家として活動を始める。カメラを使わない写真技法であるフォトグラムやスキャングラムを中心に、植物や水、昆虫、ヌードなどをモチーフとした作品を発表している。

期待される若手写真家20人展(パルコ)、ヤング・ポートフォリオ展(K'MoPA)、'99 EPSON Color Imaging CONTEST、PHILIP MORRIS ART AWARD 2000、TPCC チャレンジ(東京写真文化館)などに入選。


■ 森山大道氏の解説を収録

西村陽一郎さんが創るイメージ世界は、いつもどこか夢性を帯びている。さりげなくクールでエロティックでミステリアスな夢。
深夜、灯りを消して目を閉じると、瞼の裏に映る燐光に似たさまざまな光景が、網膜にそってゆらめき流れ過ぎてゆく。その、名状しがたい光彩の変容を感応するとき、いつもぼくは西村さんの映像を経験する。
妖しく官能的で蠱惑に充ちたミクロコスモスへの旅を。
作品集「青い花」は、西村さんの感性の昇華である。
―森山大道(写真家)


■ 飯沢耕太郎氏の解説を収録

影の花たち
飯沢耕太郎(写真評論家)

フォトグラムは写真の技法の中でも最も古いものの一つだ。というよりも、写真術が完全にでき上がる前から、塩化銀や硝酸銀を塗布した紙に物体を置き、光を当ててその形を写しとったという記録があるから、「写真以前」から存在していたとさえいえるだろう。

西村陽一郎はそんなフォトグラムに魅せられ、以前からその技法で多くの作品を制作し続けてきた。それは単純に古典技法の復活、原点回帰という事ではないと思う。フォトグラムは西村にとって、新たな表現領域を切り拓いていくための豊かな土壌であり、むしろ次の写真表現の可能性をさし示してくれる技術なのではないだろうか。

今回、西村が試みたのは、彼自身によって「スキャングラム透過陰画法」と名づけられた新技法である。この技法は、スキャナ上に置いた花や葉をネガデータにすることで作られる、いわばフォトグラムのデジタル版とでもいうべきものだ。最大の特徴は、植物の輪郭やフォルムが写しとられるだけでなく、色味が補色に反転することで、たとえば赤いハイビスカスやツツジは青っぽい画像に出力されてくる。その視覚的効果は絶大なもので、花たちはあたかも月の光に染め上げられたような魔術的な雰囲気を醸し出すことになる。いわばポジからネガに転じた「影の花たち」が、そこに出現してくるといえるだろう。

写真表現の歴史をふり返ると魔術師、あるいは錬金術師のような写真家たちの系譜が浮かび上がってくる。現実世界をそのまま再現・記録するよりは、それらを魔術的なイメージに変換することに歓びを見出し、情熱を傾ける写真家たちだ。そして、フォトグラムは彼らにとって大事な表現手段であり続けてきた。20世紀最大の「イメージの錬金術師」、マン・レイもその一人である。そして西村陽一郎も、明らかにその系譜に連なる写真家といえる。

彼のフォトグラムの探求は、むろんこれで終わりということはないだろう。「スキャングラム透過陰画法」にしても、植物だけをモチーフにする必要はないはずだ。将来的には、さまざまなモノや生きもの(人間を含む)にも拡大していけるだろう。それはそれとして、まずは花や葉からスタートしたのはとてもよかったと思う。ひっそりと闇の中で開花する「影の花たち」は、控えめだが意外な熱情を秘めた西村にふさわしいテーマといえるからだ。


■ プリンティングディレクター熊倉桂三氏が印刷を指揮

熊倉桂三
プリンティングディレクター
亀倉雄策、田中一光、永井一正、勝井三雄、浅葉克己、並河萬里、石元泰博氏、十文字美信氏、白鳥真太郎など数多くのクリエイターとともに共同作業で作品を生み出す。


■ 第58 回全国カタログ展図録部門
「金賞」 「国立印刷局理事長賞」 ダブル受賞

審査員の講評
『本作品は多くの色彩で表現された図書とは異なり、青の濃淡のみを基調として表現されたものである。シンプルでありながら、透き通るような青色の花は、一瞬見ただけで強く脳裏に焼きついた。静かではあるが、その美しさから、見る者に迫ってくる様な迫力を持った作品である。』
第58回全国カタログ展<目録>より


■ メディア掲載
Wall Street International

『青い花 - 暗闇の約束』
Leïla Vasseur-Lamine レイラ・ヴァスール=ラミヌ

佐佐木實 [訳]


月がおともの星たちを掻きわけ

まどろむ世界をながめ物想うとき

その凍てつく面の手前に 私は薄衣を広げよう

そして半ばまで持ち上げよう

(ルイーズ・アケルマン)


暗闇から露わになる半透明の輝き。西村陽一郎の写真はじっと見ていたいという気を起こさせる。パリの国際写真展 fotofeverでは、彼の『Blue Flower』と英語で題されたシリーズ117枚のうちの一部が展示された。小さめの、およそ葉書大サイズの作品を展示するという選択をしたおかげで、紫を帯びた青色の、いわば深海の色の花々を至近距離から観察するよう鑑賞者は促される。黒い奥底から燐光を放つように浮かび上がる冷たい色調。

この効果は西村陽一郎が長年に渡るフォトグラム制作の経験から掴んだものだ。フォトグラムというのは、感光剤を施した表面(例えば銀塩写真で使う印画紙)に物を載せ、それに直接光を当てることで画像を得る技法。写真術の祖先にあたり、またマン・レイの芸術表現の技法としても発展をみた技法である。この手法ではネガ・フィルム同様に画像が反転するのだが(光を浴びた部分は黒くなり、物に遮られて光を浴びなかった部分は白いままとなる)、西村はこの手法を出発点としたうえで、スキャナーという今日身近に使われている道具に着目、制作の道具としてどう使えるのか、銀塩写真とは異なるデジタル技法にどう取り組むか、と検討を重ねた。その結果生まれたのが彼が「スキャングラム」と呼ぶ技法であり、『Blue Flower』シリーズの制作へと繋がっていった。

7年に渡る探求の成果であるこのシリーズの主題は花。花は常に親密さと結びついている。一つは、制作者西村と花との親密さ。彼の自宅で採取された花や彼の妻が持ち帰った花が使われているのだ。そして、彼の花の捕らえかたから伺える親密な感情。そっとX線で撫でられて花が現れる、というか、西村が花に与えたまるで魔法のような象徴性を纏って花は立ち現れる。実際、西村はこの花の静物画に新たな息吹を吹き込む。元は赤、黄、橙の色をしていたしおれた花々を鏡の向こうで青に変え(色を反転させる)、暗がりを明るみに、光を闇にしながら。そしてそれぞれの花からは閃光が発せられる。暗闇の約束はかくあるかのように。

繊細さと鮮烈さとが共存するという植物の撞着。闇中に調和を見出す詩的な陰と陽。西村は、自然が生まれ形を成しては消え、また生まれるという、永遠の流動の秘密に光をあてる。

花を青く見ている西村は夢想する、花は死なない、と。

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